12月2日号

トーマス・バラトール
1970年アメリカ生まれ。イリノイ大大学院で環境工学を学び、東大大学院で博士号を取得。第一薬科大(福岡市)助教授でもある。守山市在住。
「健全な湖沼管理 私の使命」 
−国際湖沼環境委員会(ILEC)研究員 トーマス・バラトールさん(36)

湖の流域地図を作成するトーマスさん
 世界の湖沼の流域管理を研究する専門家である。

 「今、湖沼の流域図を作っています。日本やアメリカ、ヨーロッパなどにはあっても、途上国、とくにアフリカなどは手つかずの状態。湖沼の流域を明確にして初めて湖沼環境の健全な管理ができます。国際的貢献は、私たちの機関の使命です」

 琵琶湖が望める草津市の烏丸半島にあるILEC(財団法人)の事務所で流ちょうな日本語で話す。

 ILECは、世界の湖沼が周辺の開発によって危機にひんしているとの認識から20年前設立された。湖沼環境の健全な管理と、これと調和した持続的開発のあり方を求めて、国際的な知識交流と調査研究の推進を図る機関である。

 来日11年、ILECに勤めて7年になる。シカゴの自宅はミシガン湖から10キロほどの所にあったが、関心はなかった。

 イリノイ大時代、日本の文化や言葉などを学ぶ愛媛での10週間の国費研修に参加し、日本への興味が芽生えた。東大に留学、湖沼管理の研究をした。

 流域管理は、各専門分野による科学的な研究よりも社会学、経済学、政治学などもろもろの要素を加味して行うという。

 世界銀行のプロジェクトで、世界28の湖の管理の状態を調べ、報告書にまとめた。

 「湖沼も人と同じように様々な個性があり、すべて違う」。それ故、基本的には自説を押しつけない方がいいという。各湖沼の管理の状態を教訓として伝えることで、判断力のアップにつながることを期待している。

 「ほとんどの湖沼は本来の状態に戻れないが、湖と人々の暮らしが少しずつ良くなればうれしい。データを提供することで、そうした政策への貢献ができる」信頼できる湖沼データを集め、いつでも、誰でも共有可能なシステムの構築を目指す。

 守山市在住。日本人の妻と3人の子どもがいる。ハイキングが大好きで三上山へよく登る。

 「滋賀には琵琶湖博物館や琵琶湖研究所があります。ここでの研究に満足しています。湖、山、川、すべてが大好きです。滋賀に感謝します」

 琵琶湖の地から世界の湖沼を見つめる顔はさわやかだった。

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