10月28日号
昔日の面影ひっそりと JR東海道線「柏原」

山間ののどかな駅舎に時折、電車が行き交う
 JR京都駅から新快速に乗り、米原駅で大垣行きに乗り替えて14分。伊吹山南ろくの柏原駅に着く。京都から1時間余の小旅行が楽しめる。隣の駅は関ケ原。ここはもう岐阜県境である。

 何の変哲もないのどかな駅を南に50メートルほど歩くと旧中山道に出る。江戸時代には近江十宿の中でもひときわにぎわったという「柏原宿」−。約1.4キロの緩やかなカーブを描く宿場町を歩くと旧街道には珍しく広い道路の両サイドに紅殻格子や古い民家、商家が軒を連ねる。よく見かける「宿場町」の風景だが、どこか違う。

 グッズやみやげもの屋などの店舗を見かけない。ただ、道の両側の軒の低い民家の軒先に「柏原宿」の木札がかかり、家の前には旅籠(はたご)や造り酒屋、名物だった伊吹のもぐさ屋などのかつての店名が木製の看板で掲げられ、たった一軒だけになった創業340年を誇る「亀屋佐京もぐさ店」と道沿いの常夜灯が、静かに江戸情緒を醸し出している。

 かつては本陣、脇本陣に旅籠22軒、もぐさ屋10軒、戸数344軒、人口1500人を数えたという中山道60番目の宿場町がひっそりとたたずむ。何もない風景がかえって、体ごと江戸時代にタイムスリップさせてくれる。なぜか、ゆったりとして安らぎを覚えるから不思議だ。

 現在、宿場の拠点になっているのが街道の中ほどにある「柏原宿歴史館」。大正時代の立派な商家をそのまま活用した国の登録有形文化財に指定されている資料館で、柏原宿の観光案内所と休憩所にもなっている。宿場町にふさわしい歴史館である。「住民ぐるみの町並み保存の機運が高まり8年前に開館しました。毎年、7、8000人が訪れています。歴史街道ブームで、この中山道にも熟年世代の史跡ツアーやハイカーが増えています」と日比野勇館長。この宿場で生まれ育ったという職員の平井緑さん(55)も「この町を歩くと時がゆっくり流れて気持ちが落ち着くといわれます。子どものころから変わっていない町のたたずまいが喜ばれているようです」と話してくれた。


 再び駅に引き返して乗降客を待ったが、ウイークデーの日中は人影もまばら。地元のシルバー人材センターから派遣されている駅員の太田久一さん(68)が「乗り降りは1日100人ほどです。それも朝夕の通勤・通学時がほとんどですが、休みの日には名古屋や大阪方面からも宿場の散策にやって来られます。半時間に1本ほどの電車が行き交うのどかな駅舎です」と話した。

 柏原駅を発着にした2時間程度のコース(4.3キロ)と半日コース(8.2キロ)の2つの散策コースが春秋のシーズンににぎわいを見せるという。街道周辺には中世に婆沙羅(ばさら)大名の異名をとった佐々木道誉らを輩出した佐々木京極氏の菩提(ぼだい)寺・徳源院や戦国時代に信長や秀吉などの武将が宿営した成菩提院、東西文化の接点として知られる「寝物語の里」などの史跡も点在して、絶好のハイキングコースになっている。

柏原宿歴史館(米原市柏原)

 旧中山道柏原宿の中央部にある。築90年余の商家を改造して平成10年に開館した、柏原宿の町並みや歴史、史跡などを紹介する資料館。広い土間や蔵には宿場模型が展示されビデオシアターなどで柏原宿を紹介している。母屋に入ると中庭を見渡す座敷やレトロなガラス戸など、大正時代の書院造風の家屋が心を落ち着かせてくれる。館内には中山道の浮世絵や萬留帳(よろずとめちょう)、高札など貴重な資料を展示しているほか、天然記念物の源氏ボタルや名物のもぐさなども紹介している。食事処もあり、街道散策の人気スポットになっている。電話:0749(57)8020。

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