10月14日号
「びん手まり」共に歴史刻む 近江鉄道「愛知川」

近江上布やびん細工手まりで知られる愛知川の玄関口
 愛知川駅は、中山道の江戸・日本橋から数えて65番目の宿場・愛知川宿にある。明治31(1898)年、彦根〜愛知川間に鉄道が開通したのと同時に開業した。

 以来、駅舎は100年以上の歴史を刻んできたが老朽化のため、平成12年、観光協会の売店やギャラリーなども併設する「愛知川コミュニティハウス」として建て替えられた。

 これが駅舎? と思わせるような、シックな瓦ぶき2階建てがそのコミュニティーハウスで、愛称は「るーぶる愛知川」。

 入って正面が改札口だ。駅員さんは1人で、午前7時から午後3時まで勤務。後はワンマン運転となる。乗降客は日に700人前後で、愛知高生を中心に、彦根や八日市、長浜へ通うサラリーマンが多い。

 愛知川宿は中山道の中でもこぢんまりした雰囲気のいい宿場だったとか。そのためか鉄道と町との連携もよく、6月の「るーぶるフェスタ」では、駅構内の使われていない線路に車両を置いてもらい、中で種々の催しを行ったという。

 駅員さんが遠来の客によく質問されるのが「びん細工手まり」のことらしい。

 丸いガラスびんの中に、どうして入れたのか不思議なほど大きくきれいな手まりを入れた「びん細工手まり」が江戸時代からの愛知川の特産品なのだ。

 愛荘町立「愛知川びんてまりの館」もあるが、質問された駅員さんは、まずは目の前を指さす。改札の隣室にある「るーぶる愛知川・展示販売コーナー」だ。

 陳列棚には、色鮮やかな糸でかがられた見事な手まり入りのびんがずらりと並ぶ。町内で購入できるのはここだけで、値段は約1万円から2万3500円までとさまざま。

 「珍しい郷土品なので北海道や九州からも注文があります。東京から買いにこられた女性も」と、店頭に立つ愛知川観光協会のチーフ・辰己勇さん。作っているのはびん細工手まり保存会の女性たちだという。


 駅前を左に向かい右折すると、浜大津まで商店街=写真下=が続く。生鮮食品を扱う店も多く、飲食店も増えている。だが、人通りが少ないのが現実だ。その商店街の再生を目指して、駅前商店街振興組合が6月に「寺町宣言」を発表した。「百町街路 寺町商店街」と改め、町のにぎわいを取り戻そう−というのが狙いだ。

 駅前道を少し西へ歩けば愛知川宿の北口に出る。

 宿場町は往時の道幅のまま南へと延び、ほどなく国道8号に出合う。

 この旧街道がユニークなのは十数軒の店舗がそれぞれ由緒のある物品を展示・公開し、その連合体を「まちかど博物館」としていること。創業以来の菓子道具を展示する菓子屋や、明治時代のチラシを置く荒物屋などがある。

 そのしんがりは明治11年に明治天皇が北陸・東山道巡行の途中に小休止された、宝暦8年創業の料理旅館・竹平楼=写真下=だ。御座所と広間は平成13年、国の有形文化財に登録された。

 「愛知川は暴れ川でしたから、大勢の旅人が逗留(とうりゅう)されたようです」と愛知川観光協会会長でもある先代当主の西村重夫さん(76)は昔をしのぶ。

 さて、「びんてまりの館」や、麻織物の文化を展示する「近江上布伝統産業会館」も見ておこうと通りがかりの人に尋ねた。

 宿場通りから東へ近江鉄道を越えた付近で、歩いて行ける距離だという。

 ついでに「行けば、近くにそば屋さんなんかもありますよ」の声に促されて、歩を早めた。

愛荘町立愛知川びんてまりの館(愛荘町市)

 びん手まりは丸いガラスびんの中に、びんいっぱいの美しい手まりを入れた不思議な工芸品。旧愛知川地域に江戸時代から伝わる。製法は、さらしをきれいなまり形に丸め、ビニールと和紙をかぶせる。その上から毛糸、ミシン糸を巻き、きれいな糸で一針ずつ丁寧に模様をかがる。次に中のさらしを抜いてびんに入れてから、まりの中に綿を詰めて丸く膨らませる。びんの口を金襴(きんらん)の布でふたをして完成。

 昭和48(1973)年に保存会結成、十数人の技術指導者がいる。愛知中では選択授業となっている。館内には名作のびん手まり展示や製作解説ビデオがある。

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