9月30日号

世森登士樹(よもり・としき)
米原町(現米原市)生まれ。専門学校卒後、父経営の世金水産入社。県淡水養殖漁協青年部長としても琵琶湖の環境に腐心。彦根市在住。
「アユ養殖、おいしさ追及」 −世金水産取締役社長 世森登士樹さん(36)

出荷前のアユを選別する世森さん(自社蓄養場)
 犬上川の河口、琵琶湖に面するように湖産アユの種苗業者・世金水産はある。

 敷地内の幾つものコンクリート養殖池には、アユの群れが泳ぎ、ポンプアップされた清冽(せいれつ)な地下水が注がれている。

 「琵琶湖を見ながら働けるここが大好きです」と、およそ10年前から亡父の後を継ぐ、若い社長の世森さん。

 実家は4代前から米原でアユを扱う鮮魚商だった。有限会社に発展させたのは父で、世森さんは専門学校卒業後、そこへごく自然に入社した。「魚捕りなどが大好きだったので、少しも違和感がなかったんです」。

 仕事は大別すると2通りだ。仕入れた湖産稚アユを蓄養してから、求めに応じて各地の河川に放流する仕事と、食用においしく育てて出荷する仕事だ。

 今年、放流は山口県から福島県までの間の30河川、50トンに達した。「人生で趣味はとても大事だと思うんです。なので、アユ釣りが趣味の人々の役に立てるのがうれしくて」。

 しかし苦労もある。稚アユは遠方運搬の疲労や、各地の川の水温に耐えられるよう、強く育てておかねばならない。「そのため、池で独自の訓練をして厳しく仕立てます」という。

 食用アユとしての出荷先も静岡や四国など広範囲にわたり、各地で賞味されている。

 さて、アユは年魚だから秋にはいなくなる。日曜祝日の関係なく世話が必要だった世金水産の養殖池も、10月後半からの1カ月はまったくの空だ。

 「社のみんなと旅行を楽しんだりする期間となります」。

 その社員らといつも話し合うのは、琵琶湖を昔のようにきれいに、健全にすること。

 「魚たちが再び増えてくれるのを願うためでもあるけれど、みんなが楽しく遊べる美しい琵琶湖を取り戻し、次の世代に渡すのは私らの役目ではないかと…」と、口調は熱っぽい。

 世森さんは今年、約20業者で組織する県淡水養殖漁業協同組合の青年部長に就任した。

 「漁業発展と自然のよみがえりを目標に、組合の外へも広く呼びかけたいですね」。趣味のサーフィンで日焼けした、若々しい顔を引き締めて、そう話した。

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