9月2日号
バイオ研究に大きな未来 JR北陸本線「田村」

時代の変遷の中で栄枯盛衰を繰り返してきた駅。今また息を吹き返している
 駅舎は大きくはないが、駅構内はやたらと広い。相対式のホームを結ぶ跨線橋もかなりの長さで、かつての重要駅だった名残をとどめる。米原−坂田間が直流電化、田村以北が交流電化方式だったころ、機関車の付け替えがこの駅で行われ、2本の線路の間には中線が敷かれていた。その役割を終えると中線は撤去され、線路の間にゆったりとした空地が広がっている。一見したところ、時代に取り残されたような無人駅である。

 「昔はこの辺は田ばっかり。駅のほかはなにもなかった」−先祖の墓参りに来たという中川歳雄さん(72)=大阪市在住=が懐かしげに周囲に目をやる。ホームには学生らしき若者がそこここに。「若い人が目に付きますね」と中川さん。

 田村駅は、長浜サイエンスパークの玄関として注目され、大きな未来を開こうとしている駅なのだ。駅西口には3年前に開校した長浜バイオ大学のモダンなキャンパス=写真下=が広がり、1000人近い学生が学んでいる。大学に対面して長浜市が開設した長浜バイオインキュベーションセンターも今春から稼動を始めた。さらにその南には、長浜市が造成した5・2ヘクタールもの広大な分譲地がバイオ企業の進出を待っている。企業と大学が提携したバイオサイエンスの先端基地を作ろう−という壮大な試みが着々と進んでいるのだ。

 長浜バイオ大学は日本で唯一のバイオ系単科大学。全国各地から学生が集まり、醸造・製薬・農業などの多分野でバイオ技術をどう生かすかの研究に励んでいる。大学に対する産業界の期待も大きい。「初の卒業生を出すんですが、就職は順調です。秋には80%の内定も達成できそう」と、企画・広報担当の今井優子さん。「来春には大学院も開講しますし、インキュベーションセンターでは教授が立ち上げたベンチャー企業3社も活動中です」と誇らしげだった。白衣の学生たちが行き交うキャンパスには、若々しい息吹が満ちている。


 長浜サイエンスパークは経済特区の指定も受けた。「税制面など特区の利点を生かすためにも早く企業進出をしてほしい」と長浜市は県内外の企業に呼び掛けている。景気の停滞もあって苦戦中だが、「大学との連携は保証されており、研究成果は大いに期待できると思います」(川崎圭司商工観光部地域経済政策推進室長)とPRに懸命だ。

 駅東には、湖北17万人の胃袋を満たす長浜地方卸売市場がある。水産、青果はもとより地場野菜のせり市も。日曜には市民対象の「ごんせ朝市」も開かれる。朝の早い市場だけに、訪れた昼近くには広い場内も閑散としていた。「駅のそばにあるけど電車には乗らないね。車じゃないと仕事にならないもの」と、市場で働く若者が笑った。この日の昼食は市場の食堂で。店主の川嶋庸介さんは「一般にも開放しているけれど、分かりにくいのか地域のお客さんは少ないねえ」とのこと。駅東から徒歩5分ほどのところにある滋賀文教短大の学生も姿を見せないそうだ。

県立長浜ドーム(長浜市田村町)

 田村駅から徒歩5分。多目的の屋内運動施設として滋賀県が建設し、平成4年6月に開館した。屋内グラウンド約1万平方メートル、天井高30メートル。アメフト、サッカー、テニス、フットサル、ソフトボール、野球、陸上など多くの競技に使用できるほか、見本市や展示会などのイベント開催も可能。シャワー室や会議室も備えている。利用は有料。県体育協会が委託を受けて運営に当たっている。申し込み手続きなどの詳細は電話:0749(64)0808へ。併設されている長浜ドーム研修館は、グループや家族での研修・合宿施設で、宿泊定員は54人。有料。

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