8月19日号
心安らぐ 自然の宝庫 JR東海道線「守山」

バリアフリーエリアに整備された守山駅。都市空間に自然が同居する市の玄関口にふさわしい
 駅の改札を出て西口に向かうと、物産やメロン、ホタルグッズの並ぶ駅前総合案内所の「特産品コーナー」に入ってしまう。さらに1階に降りれば、観光ガイドブックが並び、市民展示コーナーには写真や絵画が飾られて観光気分をかき立ててくれる。

 自然豊かな守山はホタルの里や近江妙蓮公園、ヒマワリ畑の広がる琵琶湖大橋畔のなぎさ公園、バラ・ハーブ園などで知られる。案内所の山中菜実栄さんと小川千鶴さんに「自然と歴史の町をたっぷり楽しんで」と元気な声で送られ、駅前散歩へ。

 高層ビル群が立ち、すっかり京都や大阪のベッドタウン化したと思いきや、ロータリーは石像や噴水、小さな草花の咲くミニ公園になっていて、幼児を連れた母子もちらほら。その中の一人夏田春美さん(29)は「静岡から移住して1年余になりますが実家の京都にも近くとても便利。子育ての環境もいいですね」。

 駅前から真っすぐに延びる守山銀座商店街。おしゃれなアーチをくぐると広い道路と両サイドのカラー歩道に「フラワーロード」とある。すぐ横には「ほたる通り商店街」もあって、大型店の進出ですっかり衰退化した町の商店街が数多い中、これほど昔ながらの商店街が大型店と共存してる風景も昨今では珍しい。


 商店街の一角にある「まちなかギャラリー」=写真下=に入る。地元作家の近江・中山道を描くスケッチ展や夏祭りを前にした地元の草木染めサークルのメンバーが蓮染めにチャレンジした作品を展示、体験工房も開設して大にぎわいだ。リーダーの萩原恭子さんが「守山は自然の宝庫。蓮染めスカーフもおしゃれとエコライフの提案です」と話した。

 広々とした近代的な商店街に軒を連ねる印刷屋やお菓子屋、寿司屋、医者、古美術商、クリーニング店などの雑多な店舗が懐かしさとともに心を和ませてくれる。

 商店街を突き当たれば旧中山道に出る。かつての守山宿でにぎわった街道沿いには何と、今も商店街が息づいていた。宿場町のシンボルだった比叡山東門院(守山寺)の門前町かいわいは、通行手形をあしらった街路灯、格子を紅殻色に統一した家並みが復元されている。

 門前で呉服店を営む北川一さん(78)は「町衆の力で何とか歴史の町をよみがえらせて、次代につなぎたい」と中山道復興の先頭に立つ。自ら寄贈したという巨大なカエルの石像のある境内ではこの夏、久しぶりに縁日が開かれた。

 駅に引き返す途中、守山小学校の前を通って、新春の「勝部の火まつり」で知られる勝部神社に出た。学校の前や巨木の茂る鎮守の森の周辺、町中にもホタルの里らしく、小川が網の目のように流れている。真夏の強い日差しを浴びた駅前散策なのに、汗はかいてもつらくはないのは、この小川のせせらぎのせいなのかもしれない。旧中山道と高層マンションがさりげなく共存する守山駅かいわいに、なぜか心の安らぎを感じた。

東門院(守山市守山2)

 比叡山延暦寺の東門として建立された古社で守山寺とも呼ばれる。東鬼門を守る重要な地とされ、「山を守る」ところから「守山」の地名が付いたともいわれる。東門院を拠点に栄えた守山宿は徳川幕府の制定した五街道の一つ、中山道の江戸を起点とした67番目の宿場だった。「京発ち守山泊まり」の東下り第1番宿としてにぎわい、旅籠(はたご)約30軒、400世帯、人口1700人を数えたといわれる。街角に往時をしのぶ一里塚や道標が残る。街道沿いの門前周辺は宿場の面影をかすかに残し、歴史街道復興が進められている。

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