5月13日号
東西で異なる二つの顔 JR東海道線「栗東」

ガラス張りのモダンなたたずまいを見せるJR栗東駅
 平成3年に新設された栗東駅は、線路を挟んで全く違った、新旧2つの表情を見せて旅人を楽しませてくれる。まず東口に降り立つと、目の前に高層ビル群がそびえ、駅前ロータリー周辺はショッピングの幼児連れのお母さんたちが行き交う。乳母車や自転車に乗せられた乳幼児や、はしゃぎ回る子どもたちの黄色い声が飛び交いまるで遊園地のようだ。「少子化」などどこの国の話か、と思わせる光景に驚かされる。1年前に住み着いたという熊川由妃さん(33)は「買い物にも便利で何よりも子どもを育てる環境が素晴らしい」と話してくれた。

 駅前から連なる高層マンション群。少し歩くと、7年前にオープンした栗東芸術文化会館「さきら」がある。広々としたシンボル広場や野外ステージ、水上ステージまである文化ゾーンはまた憩いのスペース。ここにも日なたぼっこの母子連れの輪があちこちで見られる。「便利さもさることながら同じ年ごろの子どもが多く、子育ての環境がよく整っている」と5年前に大阪から移住してきたという小西典子さん(40)も異口同音に語る。道を歩いても、高齢者の犬の散歩にあまり出会わない。ラッシュアワーの後の駅前ロータリーは若い母親と幼児たちが主役である。ルービック・キューブを傾かせたようなガラス張りのモダンな駅舎と高層ビル群が「主役」たちによく似合う。

 駅に引き返し、今度は西口に降りてみると一転、旧中山道沿いに落ち着いた木造住宅と古い民家が軒を連ねる。高層ビルを見た後の木造建築の瓦屋根と古い民家の格子戸が目に新鮮に映る。琵琶湖越しに比叡山や比良山系の山並みが美しく映える。


 西口駅前には創立113年の大宝小学校。ここでも広いグラウンドに子どもたちがあふれ、終日元気な声が響き渡る。「この春、近くに大宝東小学校が新設されて900人いた児童が約600人になった。でも高層マンションの増加に伴ってまだまだ増え続けそうです。何せ、栗東は日本一住みやすい町ですから…」と小林直生校長が自慢そうに話してくれた。

 学校のすぐ近く、旧中山道沿いには、地区の氏神・大宝神社がある。鳥居をくぐって玉砂利を踏みしめると参道奥に由緒ある本殿が鎮座している。「線路を挟んで景色が一変します。神社周辺の景色は商店街が減ったくらいで昔と余り変わっていません」と足助康雄宮司。街道沿いには昔懐かしい家並みと田舎の風景が残り、行き交う人も野良仕事や犬の散歩をする高齢者など、東口とは全く異なる暮らしぶりが面白い。

  最後に栗東歴史民俗博物館=写真下=を訪ねた。「昔は東海道と中山道、今も名神高速や琵琶湖(東海道)線、草津線が走る交通の要衝です。そして金勝(こんぜ)山に残る石仏などの仏教文化や街道文化に、古い暮らしと高層ビル群。栗東は多彩な顔を持った活気あふれる町です」と学芸員の大西稔子さんが丁寧に館内を案内してくれた。

 古代遺跡から江戸文化、昭和レトロや未来都市までが楽しめる栗東駅。次は歴史散策の旅に出掛けたい。

大宝神社(栗東市綣(へそ))

 飛鳥時代末期の大宝年間に素戔嗚尊(すさのおのみこと)を主祭神に創建されたという由緒ある神社。栗東駅西口から徒歩10分ほどの旧中山道沿いにある。周辺の景観は元禄時代に松尾芭蕉が旅の途中で立ち寄り「へそむらのまだ麦青し春のくれ」と詠んだのどかな風景をとどめ、境内に句碑が立つ。

 また、春の大祭の神輿(みこし)巡行や献茶祭、子ども相撲で知られる秋の相撲(そうもく)祭など四季を通じて多彩な祭事やイベントが行われ、今でも地域に密着した交流広場になっている。

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