1月13日号
湯の町の情緒に工夫重ね JR湖西線「雄琴」

駅前に立つ噴水「琴のしらべ」が湯の町を予感させる雄琴駅
 西大津駅を出て比叡山坂本駅を過ぎるまで湖西線は市街地の中を走る。そこからは低山帯に入り、トンネルを抜ければ雄琴駅だ。

 高架のホームから眺めると、東側に琵琶湖。反対側は丘陵と比叡の山並み。両側とも、駅を頼みとする新住宅群が目立つ。比叡山坂本駅からのこの区間は江若鉄道廃線跡を利用せず敷設された。当初は駅も田畑のど真ん中だった。

 ホームのダイヤ表に「雄琴温泉 南へ0・5キロ」の文字。それをのぞき込んでいたリュック姿の年配男性が「大阪から温泉巡りで来ました」と改札への階段を駆け降りていった。

 この雄琴駅、温泉地であることが分かる駅名にしてほしいと市議会や温泉関係者から要請が続き、どうやら「おごと温泉駅」に改称される予定だとか。

 委託駅だ。平成17年度の1日平均乗降客は1万2000人。「温泉客は金、土、日曜に目立ち、普段は住民や北大津高校、成安造形大の学生が多いです」と、高架下の改札で仕事中の派遣社員の長谷川和夫さん。

 改札の横で、ホームへのエレベーター2基の設置工事が進行中だ。3月には完成する。またこの工事のため、構内の「雄琴温泉観光案内所」は閉鎖中。いずれ再開される見込みだと。

 表玄関にあたる琵琶湖側の駅前広場はこぢんまりしたバスターミナル。タクシー数台と温泉ホテルの送迎用マイクロバスが待機していたが、昼過ぎのせいか、人影は少ない。

 広場には、大津市が「琴のしらべ」と名付けて造った噴水がある。大小2つの琴が向き合った形だ。琴から池に注がれる二十数本の水の糸はなるほど、琴の糸に見える。また、この駅前に足湯を設置しては、という案も地元から出ている。実現すれば、湯の町の情緒も少し漂うことだろう。


 ターミナル周囲はコンビニが目立つ程度で、道路と住宅地が広がるばかり。

 それではと雄琴温泉へ向かうことにして、パンフレットの「おごと温泉観光協会」へ電話してみた。「パンフレット上では、駅名変更より一足早く、協会名の雄琴を平仮名にしました」と同協会の女性。今、温泉側では宿名の改称や、露天風呂の開設などいろいろな工夫が相次いでおり、客は増加傾向にあるという。

 十数分歩けば国道161号脇に雄琴港。湯煙こそないが、この付近が雄琴温泉だ。ヨットの浮かぶ港から望むと、宿群の建物の風情はなかなかのもの。正面の山ろくに「雄琴温泉新泉源掘削工事」の垂れ幕を付けたやぐらが見える。大津市が進める工事で、3月には掘削完了の予定だ。

 その近くの坂道を上り、雄琴小学校そばの現在の泉源=写真下=を訪ねてみた。山腹に巨大な緑色のタンクが4つ。大津市が管理し、11軒に配湯している。

 「このタンクの湯が温泉まで行ってて、お客さんが楽しまはるんやで」。通りがかった幼女連れの母親が説明する声が聞こえた。

 近隣風俗店によってもたらされたイメージを払拭(ふっしょく)しようという取り組みが続く雄琴温泉。その地道な努力が功を奏しているのが分かるような街の雰囲気だった。

雄琴温泉(大津市雄琴、苗鹿)

 年間45万人が訪れる県内最大の温泉観光地。延暦3(784)年に天台宗の開祖・最澄が開湯した霊泉とされる。また昔、8つの頭を持った大蛇がすむ谷のそばに、念仏しつつ銭を投げ入れると泡がわき、願いがかなう念仏池があり、それが後に温泉になったという伝説もある。大正時代には数十軒の温泉宿があったというが、現在は大津市が管理する泉源が雄琴小学校の隣にあり、11軒が配湯を受けている。1日平均600トン湧出(ゆうしゅつ)のアルカリ性単純温泉。また旧雄琴小学校の敷地内で大津市が新泉源を掘削中。その湧出量次第では、外湯を設ける案なども出ている。

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